この記事のポイント:タクシー業界の「点呼(てんこ)」について、対面点呼・電話点呼・IT点呼(遠隔点呼)の違いと、それぞれの法令上の位置づけ、実際の運用を解説します。安全運行を支える重要な業務プロセスです。

「点呼(てんこ)」はタクシードライバーが出庫前と帰庫後に必ず受ける業務で、運行管理者がドライバーの健康状態・アルコール濃度・車両状態を確認するプロセスです。道路運送法と運輸規則に基づく義務で、安全運行を支える最重要業務の一つです。本記事では、点呼の種類(対面・電話・IT/遠隔)、それぞれの法令上の位置づけ、実際の運用、点呼で確認される項目などを詳しく解説します。

目次

点呼とは

点呼は、タクシー会社の運行管理者が、ドライバーの健康状態・アルコール濃度・車両状態を確認し、安全に運行できる状態かをチェックする業務です。道路運送法と旅客自動車運送事業運輸規則に基づき、出庫前と帰庫後の2回(中間点呼を含めると3回)行うことが義務付けられています。

点呼の目的は、飲酒運転・体調不良運転・車両不備による事故を未然に防ぐことです。万が一、ドライバーの体調やアルコール濃度に問題があれば、運行管理者は出庫を止める権限を持っています。これにより、安全運行と乗客保護が担保されています。

点呼の3つの種類

①対面点呼(原則)

運行管理者とドライバーが直接対面して行う点呼です。営業所内の点呼場で実施されることが一般的で、健康状態の目視確認、アルコールチェッカーでの濃度測定、運転免許証・乗務記録の確認、車両点検結果の報告などが行われます。法令上、これが原則の点呼方法です。

②電話点呼(例外)

対面点呼ができない場合(車庫待ち・出張・遠隔営業所など)に限り、電話で点呼を行うことが認められています。電話点呼でもアルコールチェッカーの使用は必須で、測定結果を口頭で報告し、運行管理者が記録します。原則は対面点呼で、電話点呼は例外的な扱いです。

③IT点呼(遠隔点呼)

カメラ・通信機器を使って遠隔地から映像と音声で点呼を行う方式です。Gマーク認定事業所(安全性優良事業所)など一定の条件を満たす会社で導入が認められており、近年は技術発達により導入会社が増えています。営業所間・本社/営業所間で運行管理者を効率化できるメリットがあります。

点呼で確認される7項目

これらの項目は、運行管理者がチェックリストに沿って確認し、点呼記録簿に記載します。記録簿は1年間保存が義務付けられており、行政監査の際に提示が求められます。

  • ①健康状態(顔色・声・歩き方など目視/聴取)
  • ②疾病・疲労・睡眠不足の有無
  • ③アルコール濃度(アルコールチェッカー使用)
  • ④運転免許証の携帯確認
  • ⑤運行経路・運送計画の確認
  • ⑥車両の点検結果(日常点検)
  • ⑦運行に必要な携行品(無線機・配車端末・地図など)

アルコールチェックの厳格化

近年、飲酒運転対策の強化により、アルコールチェックの厳格化が進んでいます。タクシー業界では2011年から国が指定する基準のアルコールチェッカーの使用が義務化されており、結果は数値で記録されます。

基準値はもちろん「ゼロ」が原則で、どんなに少量でも検出されれば出庫が止められ、懲戒処分の対象となります。出庫前12時間以内の飲酒は厳禁で、夜の宴会の翌朝出勤時も注意が必要です。前日の飲酒量によっては翌朝でもアルコールが残る可能性があるため、自己管理が極めて重要です。

点呼時間と点呼担当者

1人あたりの点呼時間は3〜5分程度です。ドライバーが多い時間帯は順番待ちが発生することもあり、出庫予定時刻より15〜20分前に営業所に到着するのが一般的です。

点呼を行うのは「運行管理者」または「運行管理補助者」で、タクシー会社では運行管理者資格(国家資格)を持つ者が常駐しています。営業所の規模に応じて複数の運行管理者を配置することが法令で義務付けられています。

点呼で問題が発見された場合

健康状態に問題がある、アルコールが検出された、車両に不備があるなど、点呼で問題が発見された場合は、運行管理者の判断で出庫が止められます。これは安全運行のための必須措置で、ドライバーを守る仕組みでもあります。体調不良で出庫を止められた場合は、保障給が適用される会社が多く、無理せず休める環境が整えられています。

よくある質問

点呼は本当に毎日受けるのですか?

はい、出庫前と帰庫後の必ず受ける義務があります。道路運送法と運輸規則に基づく義務で、これを怠ると会社が行政処分の対象となります。1出番ごとに「出庫前」「帰庫後」の2回(中間点呼を含めると3回)が原則です。隔日勤務の場合は約20時間の間に最低2回の点呼を受けることになります。

IT点呼(遠隔点呼)は普通の点呼と何が違いますか?

IT点呼はカメラと通信機器を使って遠隔地から映像と音声で点呼を行う方式です。確認内容(健康状態・アルコール濃度・車両状態など)は対面点呼と同じですが、運行管理者が物理的に同じ場所にいなくても実施できる点が違います。Gマーク認定事業所など一定の条件を満たす会社で導入が認められており、複数営業所を効率的に管理できるメリットがあります。

アルコールが検出されたらどうなりますか?

即座に出庫が止められ、その日の勤務は中止となります。さらに会社の就業規則に基づき懲戒処分(けん責・減給・出勤停止・解雇など)の対象となります。基準値は「ゼロ」が原則で、どんなに少量でも検出されればアウトです。前日の飲酒が残ることもあるため、出庫前12時間以内の飲酒は厳禁です。普段から自己管理を徹底することが大切です。

点呼で体調不良を申告したら不利になりますか?

いいえ、不利にはなりません。むしろ正直に申告することが評価されます。体調不良を隠して無理に出庫し事故を起こすほうが、会社にとっても本人にとっても深刻な問題です。体調不良で勤務を中止した場合、多くの会社では保障給が適用されるため、収入面の心配なく休めます。健康管理は乗務員の重要な責務の一つです。

点呼にはどのくらい時間がかかりますか?

1人あたり3〜5分程度です。ただしドライバーが多い時間帯は順番待ちが発生することもあり、合計10〜15分程度を見ておくと安心です。出庫予定時刻より15〜20分前に営業所に到着するのが一般的なリズムです。点呼後は車両点検・無線機セットアップ・配車アプリ起動などもあるため、出社から実際の出庫までは30分前後の余裕を持つのが標準です。

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