この記事のポイント:タクシーと副業の関係は「タクシーを本業に別の副業を持つケース」と「別の本業を持ちながらタクシーを副業にするケース」の2種類があります。それぞれの法的・実務的な実態を整理して解説します。
「タクシードライバーをしながら副業はできる?」「週3日だけタクシーで働けるの?」という質問は、転職を検討している方から多く寄せられます。副業・掛け持ちに対する関心が高まる中、タクシー業界ではどのような扱いになっているのかを詳しく解説します。
「タクシーを本業として副業を持つ」ケース
タクシー乗務員として正社員・フルタイムで働きながら、別の仕事を副業として持つ形です。
会社の規定が鍵を握る
タクシー会社が就業規則で副業を禁止しているかどうかが最大のポイントです。法律上、会社が従業員の副業を全面的に禁止することには制約があり(厚生労働省の副業・兼業の促進に関するガイドラインが存在します)、近年は副業を容認・推進する会社が増えています。
しかし、タクシー業界では安全運転への影響を懸念して副業を制限している会社も依然として多く存在します。主な理由は以下の通りです。
- 乗務前の十分な休養確保(道路運送法・運輸規則上の要件)
- 疲労による事故リスクの増加
- 深夜まで他の仕事をした翌朝に乗務することへの懸念
会社に無断で副業を行い、疲労が原因で事故を起こした場合には、労働契約上の問題になる可能性があります。副業を考えている場合は、入社前または勤務開始後に会社の就業規則を必ず確認し、必要であれば会社に申告することが賢明です。
副業としてできる仕事の傾向
タクシー乗務員が副業として行う仕事として、一般的に聞かれるのは以下のようなものです。
- 隔日勤務の「明け」の日を活用したアルバイト(短時間・体力的に軽い仕事)
- ライティング・データ入力などのリモートワーク
- 農業・農作業(一部地方では見られる)
体力的に激しい副業や、深夜帯に及ぶ副業は、翌日の乗務に影響するため避けるのが一般的な考え方です。
「別の本業を持ちながらタクシーを副業にする」ケース
会社員や自営業者が、週末や特定の日だけタクシーの仕事をしたいというニーズもあります。
正社員タクシーでのパート的働き方
法人タクシーへの正社員入社を前提とした場合、「週3日だけ」「週末のみ」という形は一般的に難しいです。タクシー会社は通常、一定の乗務日数(月12〜14乗務程度)を前提とした雇用契約を結ぶため、副業感覚での週末勤務には対応していないことが多いです。
パート・アルバイト乗務員という選択肢
一部のタクシー会社では、パートタイム・アルバイトとして乗務員を採用している場合があります。ただし二種免許が必要なため、雇用形態がパートであっても免許取得は必須です。週に数日だけ働きたい場合は、パートタイムの採用を行っている会社を探すことが現実的なアプローチです。
個人タクシーとしての副業は事実上不可
個人タクシー事業者(一人で許認可を取得して営業するタクシー)は、法人での10年以上の乗務経験等の厳しい開業要件があるため、副業感覚での参入はできません。
タクシーと他業種の掛け持ちの実態
「タクシー×他の仕事」の掛け持ちに関して、実務的な観点からいくつかのパターンを整理します。
隔日勤務の「明け休み」の活用
隔日勤務では、乗務明けの翌日が休みになります。この「明け休み」に軽めのアルバイトをしている乗務員は実際に存在します。ただし、乗務後すぐに働くのは体力的に負担が大きく、十分な休養を取ることが安全運転の観点から重要です。
UberEats・配達系との比較
「UberEatsを副業にする」ような感覚でタクシーを副業にしたいという声も聞かれます。しかし、タクシーは二種免許という専門資格が必要で、雇用契約に基づく働き方が基本です。UberEatsのような「好きな時間だけ稼働するギグワーク型」の働き方とは根本的に異なります。
法律上の副業規制について
タクシー乗務員の副業に関して、直接的に禁止する法律はありません。ただし以下の関連規定は理解しておく必要があります。
労働時間の管理
労働基準法は労働時間に上限を設けています。タクシー乗務員は「自動車運転の業務」に関する特別な上限規制(2024年4月から適用)があり、年間時間外労働960時間以内等の基準が設けられています。副業先での労働時間も合算されるため、過重労働にならないよう注意が必要です。
旅客自動車運送事業運輸規則
乗務前に十分な休息を取ることが義務付けられており、副業による睡眠不足状態での乗務は運輸規則上の問題になる可能性があります。
週3日・フレックスで働くことは可能か
「週3日のみ」「月10日程度」という勤務形態は、タクシー業界では一定の範囲で実現可能です。
特に「確実勤務制」や「フレックス制」を導入している会社では、乗務日数の柔軟な設定が可能な場合があります。ただし、この場合も副業感覚というよりは「タクシーが主な仕事で勤務日数が少ない」という位置づけになります。
名古屋圏でもフレックス勤務を売りにしているタクシー会社があり、「月に何日出勤するかを自分で決められる」制度を設けているケースがあります。もし週数日だけ働きたい場合は、このような勤務形態を採用している会社に絞って検討するのが現実的です。
よくある質問
Q. タクシー会社の就業規則で副業が禁止されていた場合、こっそり副業しても大丈夫ですか?
A. おすすめできません。副業が発覚した場合、就業規則違反として懲戒処分の対象になる可能性があります。また、副業中の疲労で事故を起こした場合、会社との労働契約上の問題も発生します。副業を希望する場合は、事前に会社へ相談することが最善です。
Q. 週末だけタクシーで働く方法はありますか?
A. パートタイム乗務員の採用を行っているタクシー会社を探す方法が現実的です。ただし二種免許の取得が前提となります。完全に「週末だけ」という形は会社が少なく、ある程度の勤務日数を求める会社が多いため、具体的な条件は各社に直接確認することをおすすめします。
Q. タクシー乗務員が副業として不動産投資をするのは問題ありますか?
A. 不動産投資は労働時間や体力に影響しないため、会社規定で「営業行為の禁止」が定められていない限り問題になりにくいとされています。ただし確定申告の必要性(副業所得が年20万円超の場合)が生じるため、税務面での対応が必要です。
Q. タクシーを辞めずに他の仕事に転職活動をすることはできますか?
A. 転職活動自体は副業禁止規定の対象外です。在職中に転職活動を行うことは自由ですが、就業時間中の転職活動や、業務に支障をきたすような行動は就業規則違反になる場合があります。